ベーリンガーインゲルハイム - 振動監視による稼働率向上
長さ130メートル・高さ40メートルの高性能スタッカークレーンは、最大1トンのパレット貨物を運搬します。
製薬会社ベーリンガーインゲルハイムを支えるifmの状態監視
ベーリンガーインゲルハイムは、人と動物の健康に貢献するバイオ医薬品の製薬企業です。研究開発において業界トップクラスの投資を行い、有効な治療法が存在しないアンメットメディカルニーズの高い分野で、革新的な治療法の開発に取り組んでいます。1885年の創業以来、ベーリンガーインゲルハイムは非上場の独立企業形態による長期的な視点を維持し、バリューチェーン全体にサステナビリティを組み込んだ活動を行っています。より健やかでサステナブルかつ公平な未来を築くために、約5万3500人の社員が世界130ヵ国以上で活動しています。
16,000の保管ロケーションを備えた最新鋭の高層自動倉庫に、貴重な原料と中間体、完成医薬品を安全・効率的に保管します。これらの製品を安定して生産・出荷できる体制を維持し、サプライチェーンを途絶させないことが重要になります。倉庫内の物流作業は、長さ130メートル・高さ40メートルの高性能スタッカークレーン4台でスムーズに行われています。最大1トンのパレット貨物を運搬でき、内部物流フローの重要な役目を担っています。
課題:計画外ダウンタイムの防止
ベーリンガーインゲルハイムでは、スタッカークレーンの計画外ダウンタイムの防止が重要課題となっていました。保管ロケーションがランダムに割り当てられているため、1台でも故障すると必要な製品にアクセスできなくなります。最悪の場合は、生産ライン全体を止めなければならない可能性もあります。物流の混乱は経済的な損失をもたらすだけでなく、医薬品の供給停滞により患者の命も危険にさらされる恐れがあります。
これを防ぐために、ベアリングや駆動部、機械部品などの摩耗による故障の兆候をできるだけ早く発見する必要があります。これは、予知保全により計画外ダウンタイムを最小限に抑制することで実現します。定期点検やメンテナンスだけでは、装置の稼働により蓄積される機器への負荷を確実には見つけられません。
高感度の加速度センサにより、可動ローラやガイドローラ・ギアボックス・ホイストモータなどの重要部品の振動を連続監視し、摩耗や損傷の兆候を早期に検出します。
解決策:振動の連続監視
この課題を解決するため、ベーリンガーインゲルハイムはifmの状態監視の専門家と提携して、スタッカークレーンの状態を常時監視する最先端システムを導入しました。高感度の加速度センサを使って、可動ローラやガイドローラ、ギアボックス、ホイストモータなどの重要部品の振動を常時監視します。これらのセンサは、わずかな振動の変化も検出できるよう設計されており、損傷の兆候を早期に発見できます。
振動診断増幅器VSEシリーズで振動データを前処理して、光データリンクにより専用の産業用PCに送信し、スマート診断ソフトウェアmoneoで詳細分析と判断を行います。正確に検出するため、センサは監視する部品にできる限り近い場所に設置します。また、搬送物がない状態で動作させて、異常検出の基準となるデータを取得します。
システムに警告とアラームのしきい値を事前に設定します。設定したしきい値を超えると、メンテナンスチームに自動でメール通知が送られます。これにより、重大な故障に至る前に素早い対応が可能になり、高額な損失を未然に防止できます。
振動診断増幅器VSEシリーズで振動データを前処理して、診断ソフトウェアmoneoで分析します。
メリット:稼働率向上とピンポイント保守
目標は、稼働中の計画外ダウンタイムの防止です。摩耗を早期に検出することにより、計画的なメンテナンスを策定でき、事前にスケジュールを週末などに設定して実施できます。すでに、この予防的なメンテナンス戦略による成果が現れています。振動レベルの上昇から、メンテナンス時のガイドローラの締付が過剰だったと判明したことがありました。原因がすぐに特定できたため、損傷が拡大する前に問題の補正ができました。
このように状態監視システムは、稼働を止めないメンテナンスを可能にし、装置の稼働率向上に大きく貢献します。この成果を受けて、同社はすべてのスタッカークレーンにifmの監視ソリューションをレトロフィット導入する計画を検討しています。機械の健全性をより確実に把握し計画外ダウンタイムを防止でき、安定稼働により信頼性が大幅に向上します。ifmの高度な専門知識と総合的なソリューションによるアプローチは、導入当初から高く評価されています。
導入パートナー ifm
プロジェクト全体を通じて、ifmは単なるハードウェアの提供にとどまらず、フルサービスを提供する導入パートナーとして、構想段階から詳細計画の策定、システムの立ち上げに至るまで、ベーリンガーインゲルハイムのチームを全面的にサポートしています。またifmは、振動診断増幅器のハードウェアの供給と機器設定も支援し、IIoTプラットフォームmoneoとスムーズに統合させました。
写真1:診断ソフトウェアmoneoは、振動データの異常を検出すると警告を送信し、素早く調整できるよう保全チームをサポートします。
写真2:診断ソフトウェアmoneoは、自動分析と表示機能によりすべての振動データを一元管理でき、故障や摩耗の兆候を早期に警告します。
結論
ベーリンガーインゲルハイムは、ifmの高度な状態監視機器を導入した振動監視による予知保全で、スタッカークレーンの故障につながる潜在的な問題を特定し、対策できるようになりました。これにより、物流体制が確立され、生産ラインの安定稼動を維持しています。また、部品の摩耗抑制とメンテナンスの最適化を実現しています。
ベーリンガーインゲルハイムは、ifmと緊密なパートナーシップを構築して革新的な状態監視技術に投資し、医薬品製造と物流オペレーションの業務最適化・最高水準の維持に継続的に取り組んでいます。