ユングハインリッヒ - 物流の未来を形作る自律走行ロボット
高度なAMRを実現する環境認識・理解技術
ユングハインリッヒの自律走行ロボットを進化させたifmの3DカメラプラットフォームO3R
ユングハインリッヒ(Jungheinrich)は、創業70年の歴史を持つドイツの大手物流機器メーカーです。長年販売している手動式の機器に加え、製品の自動化にも力を入れています。同社は物流ロボット製品を強化し、顧客が実際に体験できるショールーム「Home of Mobile Robots」をミュンヘン郊外のエッヒングに展開しています。
「お客さまには是非、自律走行ロボット製品を実際に体験していただきたいのです。将来の物流の自動化開発においては、当社の実際の製品をお客さまに見ていただく必要があります」と、同社の自律走行ロボット製品担当マネージャーのManuela Schmidbauer氏は強調します。
既存環境における高度な自律走行性能
近年、物流業界の要求は大きく変化しています。製造業・小売・物流業は人手不足とコスト上昇の圧力を受け、複雑な追加設備投資を必要としないソリューションを求めています。手動と自動の設備が混在する既存の物流施設では、自律走行ロボット(AMR)の導入が不可欠になっています。「最も重視されるのは、高度な自律走行機能と直感的な操作制御です」と、Manuela Schmidbauer氏は説明します。AMRは、有人車両や搬送コンベア設備、作業者が混在する環境で作業を行います。そのため、認識能力・安全性・応答性が厳しく要求されます。「当社の物流車両には、人間のオペレーターに合わせて動作する性能と応答性が求められます」と、Schmidbauer氏は言います。
アジャイル開発に必要なパートナー
この市場要求に迅速に対応するため、ユングハインリッヒは顧客と緊密に連携して従来よりも短期間でソリューションのアジャイル開発を行っています。「そのためには、この動的な状況に対応できるパートナーが必要です」と、Schmidbauer氏は言います。「自動化を得意とするifmは、当社の自律走行ロボットに最適なセンサと制御ソリューションを提供してくれるパートナーであると分かりました」
環境認識能力を向上させるO3Rプラットフォーム
ユングハインリッヒのEAE 212aは、より高い自律性能を備えながら既存物流プロセスに簡単に導入することができる最新のAMRです。このAMRの中心となるのが、ifmの自律走行ロボット向け画像認識プラットフォームO3Rです。O3Rシステムは、最大6台の2D/3Dカメラヘッドの接続が可能な高性能画像処理ユニット(VPU)を搭載しています。VPUは、画像認識情報の同期処理により高精度な点群データを生成し、ユングハインリッヒが開発したアルゴリズムと組み合わせて車両や障害物などの確実な物体検出を実現します。
標準・安全機能を独立制御する高性能ユニット
ユングハインリッヒのEAE 212aは、最大37点の入出力に対応するifmのecomatController CR710Sを搭載しています。この車載コントローラは、振動や高温・低温に強く優れた性能を発揮します。32ビット高性能マイコンを内蔵し、短いサイクルタイムで処理を行います。また、大容量プログラムメモリにより、複雑な制御アルゴリズムを高い信頼性で確実に実行します。さらに、ecomatControllerは標準とセーフティの独立した2つのPLC機能を搭載しています。標準機能で制御タスクを処理し、セーフティ機能は国際規格TÜV認証を取得しSIL 2 / PL dに適合します。
写真1:難しい作業環境:AMRは有人車両が走行する環境でも安全に動作する高い信頼性が求められます。
写真2:進行方向をカバーする2つのカメラでAMR前方の広い範囲を高精度に把握します。
写真3:ユングハインリッヒのAMRは3DカメラO3R(写真中央部)でパレットを高精度に検出します。
PMD技術によるパレットと障害物の点群画像検出
「O3Rは2つの重要機能を担っています。パレットと経路上の障害物検出です」と、ユングハインリッヒのシニア開発エンジニアであるSebastian Gangl-Spethmann氏は説明します。車両には進行方向をカバーする2台のカメラと、後方の積載エリアを監視する1台のカメラが搭載されています。両方のカメラを組み合わせ、PMD技術により点群データから高精度な画像を生成できることが、このAMRのメリットです。「パレットがずれたり向きが反転していても、確実に検出します。これにより、AMRは荷物に安定して接近しピックアップできます」ミリ単位のパレットのずれも、この堅牢な性能により正確にハンドリングでき、倉庫物流プロセスの柔軟性が向上します。
3Dの点群データと2D環境データを統合:O3Rプラットフォームで周囲環境を立体的に認識し荷物をピックアップできます。
セーフティスキャナより高い環境認識性能
進行方向の障害物検知用の2台のカメラにより、EAE 212aは障害物を検知して停止するのではなく、障害物を回避する最適な経路を予測します。「求めていたレーザーセーフティスキャナは、人検知は確実にできますが、床の平面付近の障害物しか検知できないことがボトルネックになっていました」と、Gangl-Spethmann氏は説明します。「3Dカメラは車両前方のより広い範囲を監視します。従って経路にいる人をより早く検知できます。さらに3Dカメラは、フォークのツメやクレーンのフックなどセーフティスキャナの範囲外となる経路の上方に突起する物体も検出するため、停止せず走行を継続できます。これにより、スループットが向上し作業時間が短縮されます」
3D LiDARシステムよりも優れた検知性能
搭載された3Dカメラは、3D LiDARシステムでは難しい反射する物体も高い信頼性で検出することが可能です。2D画像を追加することにより、撮像領域をセグメント化してより精密な障害物検知が実現します。「つまり、より多くの情報が得られ物体検出性能を高められます」と、Gangl-Spethmann氏は語ります。実用においては、より広い範囲のデータから周囲環境を認識し柔軟に物体を検出できることが重要です。
高い環境認識能力を備え統合が容易
AMRの開発では、実際の現場で容易に検証できることが重視されました。O3R画像認識プラットフォームのインターフェースとツールにより、外部校正や基本設定などを含めたシステム稼働が早く開始できます。導入準備の停止期間を短縮でき、作業の労力が軽減され将来的な拡張に備えることができます。
O3R:将来AMRに求められる性能
O3R画像認識プラットフォームは、追加要求に合わせて柔軟な拡張が可能です。システム全体のアーキテクチャを再編する必要がなく、視野やカメラ、新機能のモジュールを段階的に追加することができます。この技術基盤の構築は、ユングハインリッヒの重点目標となっています。人と機械を安全かつ直感的につなげられる設計です。「今後も、自動化と自律化の需要の増加は継続します」と、 Manuela Schmidbauer氏は言います。ユングハインリッヒは、こうした変化を見据えてifmのセンサ技術を採用し、既存設備で稼働するEAE212aに求められる環境理解性能を実現しています。
成功の鍵となるパートナーシップ
このプロジェクトの成功の大きな要因の1つが、ユングハインリッヒとifmの緊密な連携です。「ifmとは良好な協力体制を構築しています」と、Gangl-Spethmann氏は言います。「重要課題について開発者にすぐ相談できるため、複雑で技術的な質問も早く解決できます」このように、両社間で開発チームが直接連携し迅速に意思決定を行いソリューションを実現できることは、技術革新が急速に進む市場環境において大きなメリットをもたらします。