ドイツ・フォード生産工場 – 工場の全体監視
ドイツ・フォード ケルン工場:超省電力・広域通信技術miotyによる工場の高効率化
無線データ通信技術による設備稼働率向上を実現したifmの工場監視ソリューション
ケルンのニール地区にあるドイツ・フォードの工場は、1930年に設立され世界市場向けに自動車を製造してきました。同工場は、2023年に電気自動車(EV)専用の最先端の製造拠点の1つとして改修され、電動車センターとして新たにオープンしました。 工場のエネルギー使用量と二酸化炭素の排出減によるカーボンフットプリント削減を目指し、資源利用効率化は一層重要になります。同工場の塗装部門も、その達成に向け自動化を得意とするifmと連携し、大規模工場の超省電力・広域通信が可能なmiotyの無線技術を導入したセンサによるデータ収集を行っています。
搬送設備の摩耗・損傷を検出
自動車製造の塗装工程は、車体が長い距離を移動します。車体が塗装工程に到着すると、洗浄してリン酸塩処理による電着塗装を行い塗膜を形成した後に最終塗装を行います。その後塗装した車体は、搬送ラインで組立工程へ運ばれます。搬送ラインのコンベアは、常時モータ駆動により稼働し止まることがありません。「モータの状態を、ifmの振動センサを使って監視します。損傷の兆候がすぐに分かるため、ラインを計画的に停止してメンテナンスを実施できます」と、ドイツ・フォードの状態基準保全担当者のStefan Blatt氏は言います。「また、モータの電力使用量も測定します。消費電力値の増加は、コンベアチェーンの摩耗や潤滑不足の兆候を示します。連続的な総合監視により、メンテナンス作業をピンポイントでタイムリーに実施できます。それにより、設備の耐用寿命を延ばして稼働コストも低減できます」
mioty:鉄筋コンクリートでも通信障害が起こらない
超省電力・広域通信技術
電力使用量の測定は、ドイツSentinum社製のスマートメーター Hyperionで記録します。Sentinumは、完全ネットワーク化されたスマートシティを通じたスマートビルディングや工場向けの無線センサを専門とするifmのグループ会社です。Sentinumは、レベルセンサからフロア監視システム、追跡用センサ・電力使用量測定メータまで、多岐にわたる製品を提供しています。センサはすべて、低電圧広域・長距離通信方式のLPWAN(Low Power Wide Area Network)に対応し、鉄筋コンクリートの天井や鉄製の構造物が多いフォードの工場内で、数キロの広範囲にわたる超省電力のデータ通信を可能にする新技術miotyを採用しています。「miotyはさまざまなメリットがあります」と、Stefan Blatt氏は説明します。「まず、複雑な環境で安定した通信を確立できるメリットがあります。最初のテストフェーズで、miotyのゲートウェイを塗装工程に設置して作業エリアの大部分の通信がカバーされました。大量の鉄筋コンクリートで建設された塗装工程は、総面積約60,000平方メートル の3階構造になっています。例えば、塗装工程の屋根下に複数の電力メーターが設置されています。そこから複雑な構造の建屋奥にあるゲートウェイに、強力な電波でデータを確実に送信します」
写真1(左):搬送ラインの重要性:搬送設備の故障は高額なコスト損失が発生する製造停止をもたらします。
写真2(左):頻繁に開閉するシャッター扉を冬季に長時間開いた状態にすると、暖房費が増加します。
シャッター扉 の監視による暖房費の節約
同様にmioty技術により、ifmのセンサもアダプタに接続して使用頻度の高いシャッター扉の開閉を監視し、データを伝送します。省エネはここでも重要です。「センサから収集したデータにより、シャッター扉の開閉がすぐに分かります。故障で開いたままの場合は、直ちにシャッター扉の修理を行うことができます。冬の間は、暖房費を抑えるためにシャッター扉をほとんど閉めた状態にすることが重要です。一方、暖かい季節は作業環境を最適な温度にするために、シャッター扉を長時間開けて涼しくすることができます」
レトロフィットの導入が簡単
シャッター扉の開閉状態を光電距離センサを使って検出し、シャッター扉付近の内側と外側にifmの温度センサも設置されています。「センサ電源の確保の問題も心配ありませんでした」と、Stefan Blatt氏は言います。「インフラを有線でネットワーク化することも可能かもしれませんが、設置作業は大変になります」数キロメートルに及ぶ大量のケーブルを用意しなければならず、配線コストが高額になるだけではありません。「塗装工程は、防爆エリアと防火構造を組合わせた強固な建築になっています。このような建築構造に、配線を効率的に後付けするのは事実上不可能です。また、設備に新しいIPアドレスを追加すると、IT関連のコストも都度発生します。mioty技術の導入により、超省電力で簡単にデータを収集でき、生産効率化を実現しています」
写真1(左):光電センサにより扉の開閉を検出します。
写真2(左):消費電力量から摩耗を把握:ifmのグループ会社であるSentinum製スマートメーターを使い、ITレベルとmioty技術による無線データ通信を行います。
成果と展望
mioty技術を使ったifmのソリューションは、フィールドテスト当初から満足のいくものでした。「今後は、アクセスポイントを追加してmiotyネットワークを拡大し、塗装工程全体を無線ソリューションでカバーする予定です。ネットワークの拡大により、今よりもさらに大量のデータをリアルタイムで収集できるようになり、最適化と省コストが推進されます」